はじめに

第65回世界SF大会/第46回日本SF大会 Nippon2007、通称ワールドコンの会場で、初めて着ぐるみを着たことについて書いています。
長すぎるレポートですが、気にするな。
SFとは特に関係ない内容です。 ごめんなさい。

文中の写真はかっきー氏、月野つばさ氏に撮っていただいたものおよび私が撮影したものです。

前日18:00 きっかけ

土曜日、SF大会。
夕方、帰る前に着ぐるみ関係者のブースをもう一度覗きに行く。
すると、顔見知りのスタッフから声をかけられる。
ス「明日も横浜に来ますか?」
私「いや、来ないと思います」
ス「そうですか。実は明日の人手が足りないんですよ」
私「なにか手伝えそうなことがあったら、明日来ますよ?」
ス「じゃあ明日着てくれるかなー?」
私「いいともー!
   って着るほうですか?」
ス「だめですか?」
私「着ること自体はむしろ願ったりかなったりですが、衣装も面下も全身タイツも持っていませんよ」
ス「あ、あれ、そうなんですか?」
別のスタッフ「その辺は全部こちらで準備しますよ。
         靴もゼンタイもあるはずだし、ゼンタイの下に履くストッキングは新品をあげますよ。
         タオルをいっぱい持ってきて下さいね。あと替えのシャツも」
さらに別の人「いやー、着ぐるみデビューがワールドコンですかwww」
ええっと、とんとん拍子に決まっちゃったけど、本当に自分でいいのかな?

10:05 遅刻

前日、興奮のためあまり眠れず。夜中に起きだして荷造り。
替えのシャツ、
替えのパンツ(当日使わず)、
デジカメの予備電池(当日使わず)、
コンパクト(当日使わず)、
首からさげるタイプの小物入れ(当日使わず)、
ウエストポーチ(当日使わず)、
レポート用紙とペン(当日使わず)、
バスタオル(当日使わず)、
ハンドタオル3枚(当日足りず)・・・。
さらに、ネットで着ぐるみの動画をチェック。あまり動きの参考にできず。

で、当然のように寝坊して遅刻。
それじゃ早速更衣室に・・・いやまずトイレに。
「ところで、今日やるキャラ、元ネタわかってるよね?」
「え?」
しまった、チェックするべきはそっちだったか。何の根拠もなくオリジナルキャラをやるものだと思い込んでいたさ。

10:30 面下着用

持参したもの:タオル数枚、替えのTシャツ、替えのトランクス。まず、トランクスのみになる。新品のパンストをいただく。パンストを履くのさえ初めてなので、はき方から教えていただく。まずパンストのつま先に自分のつま先を入れて、そこから上へと破らないように伸ばしていく。初めての人は大概破るということなので、爪やらかかとの角質やらを引っ掛けないかとどきどきしながらはいていくと、股のところまで上がらない。股下に5センチほど隙間ができる。パンスト越しの脛毛が気色悪いのは予想通り。さらにその上からパンストをはく。手回しのいいことにパンストは2枚セットだ。さらにその上から肌色のタイツ(全身タイツではない)をはいて、タイツ地の白の長いニーソックス(サイハイソックスというらしい)をはく。そろそろパンストをはいた意味がよくわからなくなってきたが、脛毛が透けないようにするためにはこれでいいのだという。タイツのすべりをよくしてはきやすくするのにもパンストが役立つらしい。4枚がさねでふともものあたりの血行が若干悪くなっているのを感じる。問題なし。同時進行で上半身の形成。素肌にらくだ色のブラジャーをつけて、その中に持参のタオルを詰め込んでいく。左右にフェイスタオルとハンドタオルを一枚ずつ、さらにフェイスタオル借りて谷間に1枚。バスタオルはやはり不要だった。ブラジャーの上からはみ出しているので、着替え中に何回かタオルを落としては詰めなおすことになった。その上から持参のTシャツを着て、さらにその上から上半身用タイツを着用。しかし、Tシャツの胸元に大きなロゴがついていて、タイツ越しに見えてしまう。悪いことに衣装は胸開き背開き。替えのTシャツも濃い色で、衣装の形態を覚えていなかったことを後悔する。ためしに裏返し後ろ前で着てみると、胸元に黒いタグが来る。仕方なくタグを切り取る。背中からはかすかに裏返しのロゴが見えているらしいが仕方がない。上半身用タイツは、全身タイツから太もも以下を切り離した形状のもので、背にチャックがついていた。指先にほつれが生じているが、手袋をはめるので何の問題もない。ついでに下半身と色合いが違うが、ロングスカートなので問題ない。念のため白のショーツらしきものをはく。衣装の固定のために安全ピンを胸元に注意深く刺して行っていただく。ここまでで何十分もかかっている。当然まだ顔は晒されている。更衣室にほとんど人の出入りがないのはいいことだ。

11:00 面着用

ようやく面を付ける。
面の髪が長くて絡まるので注意深く頭の横から自分の耳を中心に回転させるように着用するように、と注意されたのは、面の中を覗き込もうとタテに一回転させてしまったあとだった。
一発で髪が絡まる。髪を整えてから再挑戦。
かぶった一瞬汗の臭いがしたような気もしたが、すぐに感じなくなる。かなり清潔に保たれているようだ。
もっともこの日はのどが荒れ気味でマスクをしたまま面をかぶっているので、マスクにこもった私の息のほうが強烈だっただけかも知れない。
付けてみると意外と視界は良好。自分から見て、
右目のやや右上とやや右下、
左目のやや左上とやや左下
に覗き穴が確保されている。
覗き穴が左右にずれているのは、面がヒラメ顔なわけではなく、私の目と目の間が他人よりやや狭いせいだろう。
覗き穴が外側にあると感じられたら、首を左右にかしげて片目で交互に見るようにすればよいと教えてもらった。

11:10 鏡がない

で、面と衣装をフルでつけた自分の姿を見た感想をお伝えしたいところなのだが、残念ながらそれは不可能である。
更衣室は二畳ほどのパネルで囲っただけの仮設のもので、鏡などは当然ない。
会場内にも鏡はない。
もちろんトイレにはあったのだろうが、この格好ではどちらにも入れない。
最後まで自分の姿を見られなかったので、次がもしあるのならせめて手鏡を買っていこうと思う。

11:15 動き方

「猫背はだめ」
「立つ時は足は爪先を合わせてハの字。またはモデル立ち」
「歩くときは爪先から着地」
とりあえず、しとやかな動きのポイントを教わる。
が、それすら実行できない。気がつくとずんずん歩いてどっしりと立っている。
最初のポイントは守って胸だけは張っているのだから始末が悪い。

11:17 触れ合い方

「子供が近づいてきたら、目線を合わせるようにかがみこんで手を振って握手。
面の目線は視界より上を向いているから、目を合わせるためには少し下を見るように。そうそう。
しゃがむんじゃなくてひざをついて。両膝ついてもいいよ。
あと手は胸元で振るように。」
・・・かなりぎこちないです。

11:20 いよいよ

更衣室を出る。
視界が意外とよい、と言っても、基本的に正面しか見えないので恐る恐る歩く。
もともとそそっかしいのを自覚しているのですべてのモーションが普段の2割引〜半分の速さに。
面も衣装も借り物で、会場は壊れ物ばかりなのだから。

11:30 子供たちと

まず驚いたのは、子供受けがいいこと。
手を振れば応えてくれる。
かがみこんで手を差し出せば握手をしてくれる。
これが予想以上にうれしい、楽しい。
あまりに楽しいので、子供ばかりでなくご両親にも握手を求める。
応じてくれた。
握手をしながら何度も頭を下げる私はやっぱり日本人。

12:00 ブース

ブースの売り物は、着ぐるみと一緒に、またはお客さんのみでプリクラ撮影。
デジカメで撮影して、プリクラ用紙に出力する。
どちらも金額は同じ。
ちなみにブース周辺をうろついている着ぐるみはただで撮り放題。
着ぐるみのラミカや写真もさりげなく販売。

撮影:かっきー氏  撮影:かっきー氏 (どうも〜見てってください〜)
ブースの幅が狭いので待機できる着ぐるみは3人が限度。
(何度も両側のブースまでスタッフがはみ出してご迷惑をおかけしました)
ブースの前を通るのは日本人ばかりではないので、看板には日本語と英語を併記。
撮影:かっきー氏 撮影:かっきー氏(こんなことやってます〜)
ちょっとは営業活動をしようとしたけど、喋るわけにも行かないので、
・ブースのまえで興味深そうに立ち止まっていく人、あるいは着ぐるみを撮影していく人には、
看板の「着ぐるみと写真」と書いてあるあたりを指差してお勧め。
・コスプレの人が通りかかったら「単独でのプリクラ撮影もOK」と書いてあるあたりを指差してお勧め。

撮影:かっきー氏 (お値段はこちら)

値段設定がよかったのか、ノリのいいお客さんが多いのか、意外なほど多くの方がプリクラ撮影をしていってくださいました。
大げさに言うと、興味深そうにブースの様子を眺めて、さらに値段表に目を通した人はすべてお客さんになってくれたような感じで。
決して、着ぐるみ達の客引きの熱心さに負けて、ではなかったはず。
本当にありがとうございました。

13:00 人形のフリ

近くに他の着ぐるみさんがいないときを狙って、こっそりと人形のフリに挑戦してみる。
ブースの前の椅子に座って、手を不自然に前に広げてそのまま30秒ほど我慢。
で、近くを人が通ったら胸に抱えた看板を持ち替えてみたりする。
「うわびっくりした」と言う声が聞こえたので、少なくとも一人をびびらせることに成功したっぽい。
ただ、びびった人はブースのお客さんにはなりにくいだろう、ということに気づいたので、途中からは自粛。
(ただし、時々椅子で居眠りをしかかっていたので、結局あまり動かないことには変わりない。)

なお、子供を驚かすのはマズイと思ったので、親子連れが近づいていることに気づいたら、急いで動いて生きていることをアピール。効果があったかどうかは不明。


立っているときは、人形と間違われることはなかったようだ。
自分では直立不動のつもりでも前後に揺れていたのかもしれない。
そもそも等身大フィギュアを通路の端に、台座もなしで自立させることはありえないから、人形と誤認される可能性はほぼない。
一度だけ、向かい側のブースを見ていた小学生ぐらいの男の子たちがこちらに来たので、かがんで視線を合わせようとしたら、
「やっぱ本物だって」「なんか後ろから感じたもん、後ろから」とか口々に言い合っていた。
きっと本物か人形か測りかねていたのだろう。本物って何だよ。

13:30 いろいろ失敗

・最初はかぶり方が悪かったらしく、面が下まぶたに何度も当たる。そのうち衝撃でコンタクトが取れてしまった。
更衣室まで連れて行ってもらい、付け直す。
・手袋に油性マジックで汚れをつけてしまう。あらためて、申し訳ありませんでした。
・だんだん格好が乱れてくる。
撮影:月野つばさ氏 (あご、上がりすぎ!)
撮影:かっきー氏  (首、前に伸ばしすぎ!)
撮影:月野つばさ氏 (髪、乱れすぎ!)
あごを引くだけじゃ意味がないんだよ!
あごを引きながらうつむかなくちゃ!
せめて手鏡でも持っていれば・・・

14:00 ジェスチャーは意外と通じる

ブースの前に立っていたら、向こうのブースで物販をしている女性スタッフたちがこちらに手を振ってきた。
小さく手を振り返したら両手を大きく振ってきたのでこちらも負けずに大きく手を振り返した。
手を振るのをやめて直立不動に戻ると、向こうも直立不動の体勢をとってきた。
1分近くそのままにらみ合っていた。
疲れてきたので、こちらが先に姿勢を崩し、うつむいて肩で息をすることでオチをつけることにした。
それなりにウケていたようだ。


着たままで向こうのブースに行ってみた。フツーに商品を冷やかしていると、さっきのスタッフに握手を求められた。
スタッフ:「手のひら熱いよ?」
私:首の辺りを煽ぐ。
スタッフ:「あはっ暑いんだー。ちゃんと見えてる?(ピースサインを出して)これ何本だ?」
私:負けじとピースサイン。
スタッフ:「男の人?女の人?」
私:自分の口の前に人差し指を持っていく
スタッフ:「あぁ、内緒なんだ」
通じる!


椅子に座っているところを撮影した人に、写り具合を液晶画面で見せていただいた。
膝をそろえて座っていなかったことに気づく。
私があわてながら画面を指さして、自分の両膝を指差し、膝をそろえると、
相手は「あ、膝が開いちゃってますね」と言って去っていった。
通じたことはうれしかったけれど、できればもう一度取り直して欲しかったのだった。


インフォメーションカウンターに行ってみた。
カウンタに置かれた紙製のオブジェを(ヨーダのよーだ)と思いながら見ていると、
スタッフの方に「それは折り紙のヨーダよ」と声を掛けられた。
そこで私が、
a.手で正方形を作って、
b.人差し指を立てて、
c.首をかしげるしぐさを
繰り返し行うと、2度目か3度目で「ああ!そうよ、一枚の紙から折ってあるのよ」という答えが得られた。
ジェスチャーだけでこんな複雑な質問が伝わったことに感動した。
撮影:広小路葵 脱いだあとで撮った写真。これが一枚の紙から!

15:00 失敗、または一番印象に残ったこと

ただでさえ視界が狭いのだから、常に周囲に目を配っておく必要がある。特に小さな子が近づいてきている場合は早めに気づかなくてはいけない。
子供と触れ合うことは重要であるし、そもそも足元の子供に気づかないと危険である。
そう言われていたのに、立ったまま眠りそうになってしまう。

撮影:かっきー氏 直立不動!・・・ひょっとして立ったまま寝てない?

会場の入り口付近で立ったまま寝ていると、足元に衝撃を感じた。

目を開けると。

すねの辺りに小さな女の子が抱きついてきていた。

抱きつかれるまでまったく気づかなかったことを後悔。

視線を合わせようとかがみこむ。

さらに握手をしようと手を差し出す。

と。

女の子は、こちらの胸に飛び込んできた。

驚いた。

どうすればいいのかわからず、軽く抱きしめた。

ほんの数秒。

腕をほどくと、女の子は手を振りながら去っていった。


あとでブースに戻ると、他の着ぐるみさんが子供を抱き上げていた。
そうすればよかったのか!

16:30 脱ぐ

時計を見せてもらうともう夕方。脱ぐことにする。
まだまだ元気、というよりむしろ着ている間にぐんぐん体力が回復していて、のどが痛いことも忘れていた。
7時間以上も着ていたことになる。それほど長時間、トイレ・飲食なしでいられた自分に驚く。
面をはずしてお茶を飲む。
会場内は比較的涼しかったので汗をかいている実感は全然なかったが、脱いでみると胸に入れていたタオルがしっかりと湿っていた。

17:00 撮る

他の着ぐるみさんを撮影。
以下の写真は他の方の撮ったものも混じっています。
撮影:かっきー氏 撮影:広小路葵 撮影:広小路葵 撮影:広小路葵 撮影:広小路葵 撮影:月野つばさ氏 撮影:月野つばさ氏 
撮影:月野つばさ氏 撮影:広小路葵

19:00 打上げ

打ち上げは小さな居酒屋で。貸切状態。
梅酒うめぇ!

まとめ

発見

反省点と対策

お世話になった関係者の皆さんへ

当日はいろいろとご迷惑をおかけしたかと思います。
貴重な体験をさせていただきました。
改めて御礼を申し上げます。本当にありがとうございました。


inserted by FC2 system